原画: アンニバーレ・カラッチ ANNIBALE CARRACCHI
(156-1609)
版画: 同上 -ditto-
主題: 「マグダラのマリア」MARY MAGDALEN IN THE WILDERNESS
手法: 銅版画 ETCHING AND ENGRAVING.
寸法: 220 x 163mm.(画面) 222 x 166mm.(紙面)
制作: 1591年、Second state of four.
展覧: 「ミケランジェロと巨匠たち」1988年、茨城放送25周年記念。
「ミケランジェロと巨匠たち」1988年、仙台市。
「ルネサンス・バロック版画展」1995年、作品47番、
(財)くやま芸術文化振興財団、ふくやま市立美術館、
福山市教育委員会、朝日新聞社、広島ホームテレビ。
文献: 「ヨーロッパ版画名作展」国立西洋美術館、1981年、作品68番
Bartsh 16: Bohlin 12.
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| アンニバーレ・カラッチはバロック芸術の導入者として美術史に重要な位置を占める大画家である。アンニバーレはカラッチ一族の中で一番独創的で天分豊かな画家で、特に素描に傑出した才能を示し、自然や実物をデッサンすることを芸術信条の一つしていた。初期の作品にはコレッジョの詩的官能が含まれているが、見落としてならないのは、バロッチの柔らかい表現である。アンニバーレの芸術指向は、伝統の研究を通して自然の形を再び取戻そうとしたことである。この過程から構図の調和を獲得したのである。 |
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古典的均衡のとれた作品を創造したのは、何と言ってもアンニバーレの偉大さを証明するものである。アンニバーレは自己の芸術を充実させるため、ギリシャおよびローマの古代美とラファエロを徹底的に研究した。しかし自由な空間の扱い方はまったく新しいもので、過去の遺産を安易に踏襲したものではなかった。それは、後のバロック時代を支配するほどのもので、コルトーナやジョルダーノの最も正統的な先例となったものである。実際アンニバーレが率いるボローニャ派の作品は、バロック時代の幕開けを導いたのである。ローマのファルネーゼ宮殿の天井画は、古典的形式の研究成果を再生させた最も偉大な作品の一つである。
アンニバーレ・カラッチは油彩画と素描のほかに若干の版画作品も残しているが、本作品はその一点である。この版画には1591年の年記があるが、この作品が初めて美術史に登場したのは1642年、バリオーネ(Baglione,
p.391)によってである。 |
その後、本版画は1672年にベッローリ(Bellori,
p.88)、続いてマルヴァシア(Malvasia, I.p.104)が1678年に記録に留めている。この版画には、左右対称の準備的習作素描があり、現在ルーブル美術館の収蔵品となっている。この素描は寸法もマグダレーンのポーズもまったく版画と同じである。また、この版画と同じ主題で同じ構図の油彩画がデニス・マホン・コレクションにあるが、制作年代は不明である。一説では水平的なコンポジションから推定して、1586年から1587年頃ではないかとも言われているが、この版画の後に制作された可能性のほうが強いように考えられる。いずれにしても、このマグダラのマリアのポーズは、他の人物像に繰り返し用いられており、アンニバーレ・カラッチが最も好んだ姿態と思われる。ペン素描を髣髴させるこの自作版画は、アンニバーレの真の姿を伝えるものである。
西洋古典版画研究家 山中己充人 |