原画: グイド・レーニ GUIDO RENI (1575-1642)
版画: 同上 -ditto-
主題: 「聖母子」 THE VIRGIN AND CHILD.
手法: 銅版画(エッチング)Etching.
寸法: 182 x 138mm.(画面) 194 x 138mm.(紙面)
文献: (1)“Seventeenth-Century Italian Prints”1978、No.60
Stanford Art Gallery, Stanford University, By Marcus S.
Sopher
(2)Bartsh XVIII. 1, Bertela/ Ferrara, 842.
展覧: 「ミケランジェロと巨匠たち」1988年、茨城放送25周年記念
「ミケランジェロと巨匠たち」1988年、仙台市
「ルネサンス・バロック版画展」1995年、作品53番。
(財)ふくやま芸術文化振興財団、ふくやま市立美術館、
福山市教育委員会、朝日新聞社、広島ホームテレビ
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| グイド・レーニは、アンニバーレ・カラッチと共にポローニャを代表する新古典主義の巨匠である。レーニは1575年にイタリアのボローニャ近くのカルヴェンツァーノで生まれ、10歳の時アントワープの画家デニス・カルバートに弟子入りし、9年間修業を積んだ。その後レーニはカラッチ・アカデミーに魅かれ、ルドヴィコの弟子となった。最初、ボローニャの教会のために制作した祭壇画(1595−98)が高い評価を得た。レーニの活躍は、ボローニャとローマに分かれるが、そのローマへ初めて行ったのは1600年頃である。その時、同行したのはドメニキーノとアルバーニで、共にアンニバーレの弟子となり、ファルネーゼ宮殿の装飾に従事した。 |
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| この頃、レーニは古代ローマの彫刻とラファエロを研究して芸術により深い精神性を加え、最高傑作と言われるロスピリオージの天井画「オーロラ」を制作した。古典主義こそレーニにとって純粋美を表現する理想的規範であったのである。つまりレーニは明解な形と古典美を結合させて、写実主義一歩前進させたのである。ミケランジェロ以来最高の彫刻家であるベルニーニさえも、色々な表情表現をレーニから学び、彼の心からの賞賛者であったことは注目に値することである。レーニは古典的調和を求める全ての画家にとって、その指針を示す道標となったのである。事実レーニの芸術様式は1630年代のヨーロッパで最強最大の影響力を持つものであった。同時代の画家にとって、レーニの様式を無視して制作活動を行うことは、芸術生命を絶つことで、レーニこそ芸術の法律であった。 |
レーニの版画作品はわずかに数点を数えるのみであるが、本版画はその中の1点である。バルチは、この作品について「レーニの最も美しい版画で、極めて珍しいものである」と述べている。この作品の年代は明確には分からないが、カラヴァッジョの影響が薄れ、ラファエロの影響を強く受けるようになった時に制作されたものであろう。スタイル的に考察すれば、あの輪郭のはっきりと冴えた理想化した古典主義様式の始まる前の1610年頃と考えられる。作品の印象は盛期ルネサンスのラファエロを髣髴させるものである。しかしラファエロの聖母子は、幼児キリストはマリアの方を向いていないが、本作品では母子が抱擁し、愛情がこの上なく良く表現されている。版画的には、アンニバーレの力強いエッチング様式と共通するものがある。なお刷りの状態は最上級である。
西洋古典版画研究家 山中己充人 |