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画家: ヤコポ・ポントルモ JACOPO PONTORMO (1494-1556/7)
主題: 「三人の歩く男の習作」STUDIES OF THREE WALING MEN.
手法: 赤のチョーク。 Red chalk.
寸法: 412 x 263mm.
出所: サー・ジョシュア・レナルズ Sir Josua Reynolds (L.2364)
    W. S. ブラウ Brough (L.2652)
    ルドルフ博士 Dr. C. R. Rudold (L.2811b.)
展覧: 「西欧巨匠素描展」北九州市立美術館、1981年
    「西洋古典巨匠素描展」群馬県前橋、1988年
    「ミケランジェロと巨匠たち」茨城放送局、1988年
    「ミケランジェロと巨匠たち」仙台市、1988年
    「からだのイメージ」静岡県立美術館、1991年
 ポントルモはイタリアの生んだ美術史上最高の素描画家の一人で、レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロなどの盛期ルネサンスの大素描家時代にあっても、なお偉大な素描家と言われている。デッサンこそポントルモ芸術の真髄を表わすものである。1516年頃になると、ポントルモの素描と概念は、古い規範から離脱していった。その頃、ポントルモの最大の関心事は、本作品のような運動の連続状態とその結果的表現である。本素描は「ヨセフの物語」の第三パネル(1517年)のための習作と考えられるもので、ミケランジェロの筋肉描写と解剖学的習作を研究した結果を示すものである。 この作品こそ古典主義からマニエリスムへ転換した最初の微候を示す作品なのである。ポントルモ以外、如何なる画家もマニエリスムの起源とそれ以前の古典的様式との関係を示す考証となるような作品を残していない。それ故この美術史的重要性は比肩するものが無い。また、この素描が赤チョークで描かれていることも、その重要性を増す一要因である。ポントルモの明確性、純化した感覚、誇張された明晰さ、あるいはその一連の発展が一番良く表現されているのが、赤チョーク素描なのである。

黒チョークは大体実験的なデッサンにのみ使用されている。 また、優れた素描は殆ど 450 x 315mm. から 400 x 250mm. の間のクリーム色を帯びた白い用紙に描かれている。ポントルモが使用したチョークは、1500年代の初期にフィレンツエで一般に用いられていた赤鉛筆のmattia rosa と黒鉛筆の mattia nearである。1530年頃までは両方用いていたが、1530年を過ぎた頃から黒チョークを次第に好むようになり、1545年以降は殆ど黒チョークのみ使用している。1530年以前には、他の画家たちと同じようにペンとビスタ(煤で造った絵画用着色顔料でこげ茶色)を用いたこともあったが、この手法は本格的には多用されなかった。 用紙もまた白い紙を好んで用い、茶色や灰色、あるいは青色の紙を用いたのは1530年以前のことである。 ポントルモは絵画においても重要な業績を残したが、それ以上にフィレンツエの偉大な伝統の中で、最高かつ特異な素描表現を創造したことは特筆されるべきことである。素描においてミケランジェロとの対比が許されるのはポントルモただ一人である。古典主義ルネサンスに終止符を打ち、新しい芸術様式のマニエリスムを創造し、更に現代的な肖像画の基礎を作ったのもまたポントルモなのである。

西洋古典版画研究家 山中己充人

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