原画: ルーカス・ファン・ライデン LUCAS VAN LEYDEN
(1489-1533)
版画: 同上 -ditto-
主題: 「アハシュエロス王の前のエステル王妃」ESTHER BEFORE AHASUERUS
手法: 銅版画 ENGRAVING.
寸法: 272 x 223mm.(画面および紙面)
出所: Kupferstichkabinett, Berlin (L.1606, L.2398)
K.F.F. von Nagler (L.2529)
刷版: 初版、The first state of three.
制作: 1518年
文献: The Prints of LUCAS VAN LEYDEN, by Ellen S. Jacobowitz No.68:
B. Holl. 31.
展覧: 「ルネサンス・バロック版画展」1995年、作品18番、
(財)ふくやま芸術文化振興財団、ふくやま市立美術館、
福山市教育委員会、朝日新聞社、広島ホームテレビ。
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本作品はルーカスが1518年に制作した版画であるが、そのステートは第三版まである。しかし本作品はそのファースト・ステート(第1版)という極めて貴重なものである。この第一版はペトリの文字が入る前のもので、その用紙には「手と花」(a
Hand and Flower)の透かし印が入っている。文献ブリックの番号では11465で、用紙の製作年代は1516年である。また、この作品の来歴も第一級で、重要性に関しては多言を要さない。
この作品の主題は、旧約聖書にある「エステル記」から取られている。ユダヤの女エステルはペルシャ王アハシュロス(エクセル一世)の王妃に選ばれたが、その五年後、王の寵臣アマクレ人のハマンは民族の敵ユダヤ人の全滅を図った。
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そして、王からその勅許をえた。それを聞いた王妃エステルは、自分がユダヤ人であることを明らかにして、王に訴えてユダヤ人を救おうと決心したのである。王のお召しが無ければ、王に面会することが出来なかったにも拘らず、エステルは王に近づいた。王は好意を示し、金のシャクを伸ばして面会を許し、王妃の訴えを聞き入れたのである。その後、ハマンは処刑されて、ユダヤ人は救われたのである。本作品ではエステルの絶望的表情と、その理由を知らない王の様子が対照的に描かれている。
ルーカス・ファン・ライデンは16世紀における最も偉大な画家であり版画家の一人である。その優れた才能を示す言葉に「ルーカスは鉛筆と版刻刀を手に持って生まれてきた」と言うのがある。ルーカスは最初画家である父親から手解きを受け、その後1508年にコルネリウス・エンヘルブレヒツの弟子となり、直ちに「占い師」(ルーブル美術館蔵)を描いた。
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ルーカスは版画家としても早熟な才能を発揮し、1508年には光と陰影のはっきりした「モハメッドと修道士」(Mohammed
and the Monk)という銅版画を版刻した。ただルーカスが何処で版画を学んだかは、現在のところ不明である。ルーカスは続いて1509年に「キリストの受難」を表わした9点の連作版画を制作した。この作品では、ルーカスは人体のポーズと心理的描写の技巧を体得した。ルーカスは銅版画のみならず、木版画も1511年頃から制作し始めている。デューラーに出会ったのは1521年のことである。1526年以降ルーカスはヌード作品にも興味を抱き、1529年にはイタリアのライモンディから影響を受けて神話に傾倒するようになり「アダムとイブの物語」に基づく6点の版画を制作した。
西洋古典版画研究家 山中己充人 |