原画: ルーカス・ファン・ライデン LUCAS VAN LEYDEN
(1489-1533)
版画: 同上 −ditto−
主題: 「頭蓋骨を持った若者の肖像」PORTRAIT OF A YOUNG MAN WITH A SKUL.
手法: 銅版画 Engraving.
寸法: 185 x 144mm.(画面・紙面)
制作: 1519年。First state of two before Hondius' address.
on paper with a Proprietory watermark. (Holl. 174)
文献: Jacques Lavalleye 119番, Bartsch 174番、Holl. 174番。
展覧: 「ミケランジェロと巨匠たち」1988年、仙台市、水戸市
「ルネサンス・バロック版画展」1995年、主催:ふくやま私立美術館、
(財)ふくやま芸術文化振興財団、福山市教育委員会、朝日新聞社、他。
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| ルーカス・ファン・ライデンは16世紀前半における最も偉大な画家であり版画家の一人である。その優れた才能を示す言葉に「ルーカスは鉛筆と版刻刀を手に持って生まれてきた」というのがある。ルーカスは、あまり才能が無かった画家である父親から最初に絵の手解きを受け、その後1508年にコルネリウス・エンヘルブレヒツの弟子となり、直ちに「占い師」(ルーブル美術館蔵)を描いた。しかしルーカスは版画家としても早熟な才能を発揮し、1508年には光と陰影のはっきりした「モハメッドと修道士」という銅版画を版刻した。ただルーカスがどこで版画を学んだかは、現在のところ不明である。ルーカスは続いて1509年に「キリストの受難」を表わした9点の連作版画を制作した。 |
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この作品では、ルーカスは人体のポーズと心理的描写の技巧を体得した。ルーカスは銅版画のみならず木版画も1511年頃から制作し始めている。また、1514年には初めてライデンの画家組合に入った。デューラーに出会ったのは1521年のことである。ドイツにおいてはデューラーが版画を完成させ、イタリアにおいてはマルカントニオ・ライモンディが、そしてオランダにおいてはルーカス・ファン・ライデンがその名誉を担っている。1526年以降ルーカスはヌード作品にも興味を抱き、1529年にはライモンディから影響を受けて神話に傾倒するようになり「アダムとイブの物語」に基づく6点の版画を制作した。
本版画は1519年頃に制作されたエングレイヴィングである。タイトルは「頭蓋骨を持つ若者の肖像」であるが、一般的にはルーカス・ファン・ライデンの自画像と考えられている。 |
ルーカスはこの頃からアレゴリーによる主題を好んで描いている。手に持っている頭蓋骨は「汝、死すべきことを覚えよ」(MEMENTO
MORI) と、トラピスト修道会士が地上的生命のはかなさ日夜繰り返し唱えていることの寓意である。若者の豪奢な衣服は、虚栄を象徴するものである。この版画の説諭的メッセージは、巧妙に考案された髪型、変わった衣装、羽毛のついた浮薄な帽子などと対照的な人物の真剣な身振りと態度によって良く表現されている。あらゆる点で本版画はルーカスの最も感受性の強い、神経過敏な、しかも知的で独創的な作品である。ルーカスはゴッシックからルネサンスに道を切り開いた最大級の巨匠である。さもなければヴァザーリは、ルーカスをデューラーよりも高く評価しなかったであろう。
西洋古典版画研究家 山中己充人 |