原画: ラファエロ・サンティ RAFFAELLO SANTI (1483-1520)
版画: マルカントーニオ・ライモンディ
MARCANTONIO RAIMONDI (c.1480-c.1534)
主題: 「クオス・エゴ」 QUOS EGO (NEPTUNE CALMING THE STORM.
手法: 銅版画 Engraving.
寸法: 420 x 325mm. (画面)
文献: 「イタリア古典版画」京都国立近代美術館および
神奈川県立近代美術館、1977年、22番
展覧: 「西欧古典版画店」北九州市立美術館、1885年
「ミケランジェロと巨匠たち」茨城放送開局25周年記念、1988年
「ミケランジェロと巨匠たち」仙台市、1988年
「ルネサンス・バロック版画展」福山市立美術館、1995年 |
| ライモンディはルネサンス期における最も重要な版画家で「翻刻版画」の創始者としても、版画史上最高の地位を占める一人である。本作品はライモンディの版画の中でも特に有名なもので、ラファエロの素描に由来するものである。 |
主題はローマの詩人ウエルギリウスの「アイネーイス」の中のディドーとアイネイアースの恋物語から取られたものである。 |
| トロイア戦役を通してギリシャ軍に味方をしていたユーノー(ヘーラ)は、パリスの審判の恨みを晴らすため、トロイア軍への復讐の手を緩めなかった。中央の絵は、踊り跳ねる四頭立ての海馬に引かれた戦車に乗った海神ネプトゥーヌス(ポセイドン)が、アイネイアースの船団に吹き付ける暴風を鎮めようとしているところである。この風は風神エウロスが起こしたもので、海神が「厚かましい風め!
思い知らせてやろうぞ」と叫んでいるところである。左上はウエヌス(ヴィーナス。パリスの審判で金のリンゴを受けたアプロディテー)が、アモール(クビト)の引く車に乗っているところ。上部中央では、ウエヌスがゼウス大神にアイネイアースを救ってくれと頼み、神の使者メリクリウスがゼウス大神の命令を、ディドーに伝えにいくところである。この円は黄道で、地球から見て太陽が地球を中心に一年間運行する大円である。この黄道の春分点を起点として12等分したのが12宮である。白羊宮、処女宮、金牛宮、双児宮、巨蟹宮(かい)、獅子宮、天秤宮、天蠍宮(けつ)、人馬宮、磨羯宮(かつ)、宝瓶宮、双魚宮などでる。 |
左側二枠の上は、暴風雨で漂着した所で兵士を労わっているアイネイアース。その下は、探検に出かけたアイネイアースと友人アカテスが森の中で、女猟師に身を変えた母ウエヌスに出会ったところである。そこには白鳥が見えるが、本当は全部で12羽飛んでおり、女神はそれを指して、アイネイアースの部下は同じように無事であると言っている。左下は、ディドーがユーノーのために建てた青銅の神殿にたどり着いたところである。右上は、王座に腰を下ろした女王ディドーが、トロイア人を手厚く迎えたところ。その下は、アイネイアースが初めて女王に会うところである。右下は、アイネイアースの話に耳を傾け、胸をときめかせながら恋心を抱いたディドーである。1515年に制作されたこの版画の原案(デザイン)は、ぺルッツイによると言う説もあるが、いずれにしても本作品はそれまでの全ての作品の中で、考古学的に一番の野心作である。古典古代への趣味を開いた作品として、その重要性は計り知れない。なお、本版画はアントニオ・サラマンカが出版したものと考えられる。
西洋古典版画研究家 山中己充人 |