原画: リチャド・ウィルスン RICHARD WILSON (1717-82)
版画: ジョン・ウェッセル WHESSELL (fl.c.1790-1820)
主題: 「ヴェズヴィォ山」 VESUVIOS
手法: ソフト・グランド・エッチング
寸法: 134 x 189mm.(画面) 176 x 226mm.(版面)
連作: 「習作とデザイン」50点の連作より40番
制作: 1811年
文献: W.G.コンスタブル著「リチャド・ウィルスン」2頁及び27頁
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| 本版画はオクスフォード州ノース・アストンに住むオールドフィールド・ボールス氏が所有していたリチャド・ウィルスンのスケッチ集を、ジョン・ウェッセルが1811年に、実物そっくりに版画に制作したものの中の一点である。現在この素描集は、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館に収蔵されている。 |
この素描は、1752年にローマにおいて描かれたもので、全部で78点から成るものである。そのスケッチ・ブックの表紙には
Stadies & Designs/by R. Wilson/done at Rome in the year/
1752/Caffe delle Inglesi と記されている。このスケッチ・ブックの大きさは 203 x 132mm.
で、それぞれの素描は鉛筆で枠が書かれている。 |
| 現在これらの頁には正式に1から78まで番号が付けられているが、ウィルスンが付けたと考えられる元のナンバーは1から31番までである。しかし、タイトル頁には番号は無く、その上22頁と28頁が紛失している。
この重要なスケッチ・ブックを元にして、本版画集が制作されたのは、ボールス氏が鑑賞の楽しみと絵画のあらゆる手本としてきたこの素描集を、多くの人々に分け与えるためであった。この版画集はタイトル頁と50点の版画から成るものである。ボールス氏は鑑定家兼アマチュア画家の達人として、巨匠ウィルスンが素早く描いたこの簡潔なスケッチから多大な楽しみと美術の諸要素を学び取ったのである。
これらのスケッチ集は、ウィルスンの特徴を最も良く示すもので、完成された油彩画よりもスタイルの原理と基本を良く伝えるものである。言い換えれば、この軽妙な素描こそ素描芸術の極意を修得したウィルスンの真髄なのである。 |
なお、この版画集が発売されたとき、ボールス氏や画家ベンジャミン・ウエストを含む57人の有名人が購入している。
本作品の主題は、イタリア南部カンパーニャ州にある「ヴェズヴィォ火山」を描いたものである。この火山は紀元79年8月24日に爆発し、ポンペイ(Pompei)が埋没した。リチャド・ウィルスンは何よりも「英国風景画の父」として知られた画家であるが、彼は又1768年に設立されたロイヤル・アカデミーの創立メンバーの一人として、画家以外でも歴史に残る人である。ウィルスンは二コラ・プッサンやクロード・ロランにも影響を受けたが、本人としてはオランダの風景画により深い関心を持っていたようである。いずれにしても気負いや見せ掛けの無い重厚な風景画はウィルスンの最大の特徴であり魅力である。また、クローム、コットマン、コンスタブル、ターナーなどでさえもウィルスンから芸術的恩恵を被ったことは特筆すべきである。
西洋古典版画研究家 山中己充人 |