画家: ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー (1775-1851)
版画: エドワド・グッドール EDWARD GOODALL (1795-1870)
主題: 「荒野の大暴風」 A HURRICANE IN THE DESERT (THE SIMOOM)
手法: 鋼版画 SEEL ENGRAVING.
寸法: 294 x 153mm.(版面)
制作: 1833年
原画: Trustees of the British Museum.(T.B. CCLXXX-195)
An illustration to 'Human Life'.
文献: The Life and Work of J.M.W. TURNER by Andrew Wilton, No.1189
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| サミュエル・ロジャーの有名な著書「イタリア」と「ポエム」の挿絵は、ライン・イングレイヴィング史上、最も美しく愛らしい版画と言う最高の評価を受けているものである。その挿絵を描いたのがターナー、トマス・ストザート、プラウトなどである。この挿絵版画の重要性は、同時代の如何なる作品と比べても頂点に立つもので、版画史においてさえも細密画の傑作として燦然と輝いている。 |
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この版画集の制作に当たったのは、グッドール、ミラー、ウォーリス、W.R.スミス、キュー、クック、パイ、フィンデン、アレン、ロールス、ロビンソン、ハンフリース、ダブンポート、ルイスなど、当代最高の版画家たちである。その上、特に重要なことは、本版画は本の中に使用された挿絵ではなく、純然たる版画として出版された一種のプルーフ版画であることである。その見分け方は、使用された版画原版のプレート・マークが見えるかどうかである。そのために本版画はプレート・マークが見えるように額装されている。なお、本の1ページの寸法は202
x 135mm.である。
ロジャーは英国のストーク・ニューウインドで、銀行家の息子として生まれた文人である。この二冊の挿絵本は、エドワド・モクソンによって出版されたが、その費用として詩人で銀行家のロジャーは、15,000ポンドの大金を融資した。この出版に当たって、著者ロジャーは「かつて出版された如何なる挿絵本より美しく、精密で優れたもの」ということを念頭に置いた。この最大級の望みは奇跡的にも実現したのである。 |
その結果、批評家たちは「比肩するもの無し」と絶賛した。世界最高の美術史家の一人であるラスキンも、この挿絵版画を見て、自分の人生が変わったと激賞している。これらの挿絵版画を描いた画家の一人であるターナーは英国が生んだ最高の天才であるが、彼の下絵よりも版画のほうが優れていると言われている。しかし、これはターナーが版画家の手引きになるように、意識的に突飛な色彩を施したからである。この版画が極めて優れた作品となったのは、何と言ってもターナー自身が版画家と一緒にこの仕事に当たったからである。彼は版画制作の全てを監督し、その仕上げの完璧を期したのである。ターナーは、版画家に下絵の変わった色彩の意味を綿密に教えて、どうすすれば白黒の明暗法によって、色彩の効果が得られるかという、技法のヒントを教えたのである。1800年頃より英国の版画家のレベルは、ヨーロッパ最高の域に達し、この当時の英国版画は、最も芸術性豊かな作品となったのである。なお本版画は、1834年に出版された「ポエム」の第二章“Human
Life”の挿絵として制作されたもので、その原画(水彩画)は、現在は大英博物館に収蔵されている。
西洋古典版画研究家 山中己充人 |